私はB2B向け通信サービスのマーケッターとしてチームを率いているが、今年の戦略を考えるにあたり、改めて広告の役割について考えてみた。
広告の役割は明確で、顧客へマーケティングメッセージを伝え、自分たちのサービスに興味を持ってもらい、認知や興味、関心を得ることだ。潤沢な予算があるならば、思いっきりやったほうがいいことは間違いない。しかしよくある話ではあると思うが、社内で広告コストの費用決裁を得ようとすると、経営陣からはROIはどうだ?成功する確率は?と質問が飛んでくる。時には広告よりも営業を増やした方がいいのでは?代理店へのインセンティブを増額しよう!と切り返されることもある。その都度数字を交えた資料を作り、論破していくこととなるが、B2Bマーケティングにおいて広告の役割や効果を説明するのが難しいときもある。理由は企業や購買担当者によって様々なコンテキストがあり、ターゲットとメッセージをマクロに考えにくいからだと思う。B2Cでも同じことが言えるかもしれないが、B2Bよりかは絞り込みやすい。昨年1月にB2Bサブスクビジネスをローンチして、しばらくはデジタルマーケティングを中心に需要が顕在化しているターゲットとのコミュニケーションを続けてきたが、今後はブランディングを強化する。その際の広告の役割をどう考えれば良いのか、考察してみる。
まず、多くの認知を得るために、とりあえずマス広告を打つというのは少し考え直した方が良いだろう。そもそもターゲットユーザーが本当にCMを観ているかというと、メディアの多様化や情報過多などにより、観てくれたとしてもメッセージを理解してくれる確率は低下している。テレビや新聞を観ない人々も増えている。B2C向けのように映像とリズムで印象付けることが有効な商品であれば、それでもテレビの力は大きいと言えるかもしれないが、B2B向けに合理性を説明する媒体としてはマス広告の優位はそれほどでもないだろう。
マス広告以外の選択肢としては、PRに注目している。最近は広告を嫌う顧客も多く、例えばデジタルマーケティングにおけるリターゲティングによる興味・関心が高い顧客への集中的な広告配信は嫌われる傾向にあり、時にはクレームに繋がることもある。そのほかでも、企業が強く自社サービスを勧める姿勢に対して、嫌気を感じる機会が多いとの意見もある。その点、PRはメディア等の第三者による推薦を得ることができるので、情報に対する顧客の信頼度が高い。また、メディアの書く記事においては、顧客の様々なコンテキストに対して細かなコミュニケーションが可能なので、第三者故にコントロールは難しいものの、関係値を築くことで意図するメッセージを発信できる確率が高くなる。
PRの活用に加えて、VOCや定量調査による信頼構築も重要だろう。法人でも、個人でも、何かの購入を決定するには情報を集めるが、おそらくまずはメーカーが言っていることを理解して、その後第三者がどのようなコメントをしているかを分析していく。メーカーの主張と、第三者のコメントが一致した時、信頼が生まれて購入を後押しする。自社の製品を認めて宣伝してくれる顧客が現れたとしたら、その意見は強力な広告となる。このように考えると、マス広告により製品の機能的価値や情緒的価値をメーカー目線で訴求するのも無駄ではないが、PRやインフルエンサーなどの第三者による推薦を増やす活動にコストを割り当てるが良いかもしれない。そして、企業が広告で発信するメッセージとしては、製品そのものではなく、なぜそれを世に送り出すことになったのか、というストーリーを伝えることに注力してみるのも良いだろう。メーカー発信で企業経営の想いを語り、第三者がそれを受けて製品を紹介する。顧客はそれらを観て興味が高まり、信頼していいと判断するならば、長期にわたって自社製品を愛してもらえるかもしれない。
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